園芸療法 チューリップの思い出

北海道、十勝では5月中旬にチューリップの満開を迎えます。

本州などの温暖地に比べると1か月ほど遅いピークなので、道外の方は驚かれるかもしれませんね。

2階の食堂前花壇では、昨年の11月に園芸療法の時間で植えた赤、白、黄色、ピンクのチューリップが一斉に咲き揃いました。一方で、3階の移動式レイズドベッド(持ち上げ式花壇)に植えたチューリップは一斉に咲き揃うことはなく、黄色、白、赤と順番に咲いて盛りを過ぎました。植える場所や条件が違うと全く様子が異なるのですね。


さて、上の写真では入所者の方がチューリップの様子を眺めていらっしゃいます。

こちらの方は10月頃に当施設に入所され、一緒にチューリップの球根を植えました。食堂のお席がちょうど球根を植えた花壇がよく見える位置なので、花壇が雪に覆われて芽が出る前から窓の外の花壇を眺めては、「いつ頃芽が出てくるか、それだけが楽しみ」とお話しされていました。

4月に入ってちらほらと芽が出てくると、「芽が出てきて良かった。何色の花が咲くかな」と今度は花が咲くのを楽しみにされているようでした。

そして、5月の連休辺りからちらほらと花が咲き始めると、「きれいですね。親と一緒に植えたのを思い出します」とお話しされていました。

そして、風の穏やかな暖かい日、ちょうどチューリップが満開を迎えたため、チューリップの花を近くで見るために花壇に向かいました。

とても天気の良い日で、チューリップの花がまるで発光しているかのようです。

鮮やかなチューリップの花の様子を見て「きれい・・・」と言ったあとに、「本当にしあわせ・・・」と小さくつぶやかれていました。

そして、「昔は赤い花ばっかりだったような気がする。お母さんと一緒に植えた」と話されると、急に感極まった様子で、「親のことを思い出します」と言って涙をこぼしていらっしゃいました。それ以上、多くをお話しされることはありませんでしたが、しばらくの間、静かにチューリップの花を眺めた後、「ありがとう」といって室内に戻られました。

在りし日のお母様との思い出や幼い頃の記憶を思い起こされたのでしょうか、それはご本人にしか分からないことですが、満開に咲くチューリップの花をきっかけに感情が揺さぶられていらっしゃるのを見て、改めて、花や植物の持つ力を感じずにいられませんでした。

何気なく咲いている花が、あるひとにとっては何でもなくても、あるひとにとっては(良くも悪くも)強い影響を及ぼすことがあるということは、丁寧におひとりおひとりと向き合うことの大切さを教えてくれます。


Posted by 園芸療法士

老健かけはしブログ

社会医療法人北斗 十勝自立支援センター 介護老人保健施設 かけはしのブログです。 かけはしの取り組みや園芸療法、イベント情報などを随時お伝えします。

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